最決昭和59年3月22日

民法八九二条の規定によれば、推定相続人の廃除請求は、同条に定める要件がある場合に、被相続人から遺留分を有する推定相続人を相手方として家庭裁判所に対してすべきものと定められているが、その趣旨は、右規定に定める要件がある場合に被相続人に実体法上の廃除権ないし廃除請求権を付与し、家庭裁判所を介してこれを行使せしめるとしたのではなく、形式上右要件に該当する場合であつても、なお家庭裁判所をして被相続人側の宥恕、相続人側の改心等諸般の事情を総合的に考察して廃除することが相当であるかどうかを判断せしめようとしたものであつて、このことは、同法八九四条が被相続人に、廃除後何時でも、推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができるとしていることからも明らかであるから、右推定相続人の廃除請求の手続は純然たる訴訟事件ではないと解するのが相当である(最高裁昭和五四年(ク)第一四九号同五五年七月一〇日第一小法廷決定・裁判集民事一三〇号二〇五頁参照)。したがつて、推定相続人廃除の手続を訴訟事件とせず非訟事件として取り扱うとしても、立法の当否の問題にとどまるのであつて、違憲の問題が生ずるものとは認められず、それが家事審判法に定める手続で行われるものとされている以上、その裁判は、公開の法廷における対審及び判決によつて行わなければならないものではない。このことは、当裁判所の判例の趣旨に照らし明らかである(昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年七月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一〇八九頁、昭和三七年(ク)第二四三号同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一一一四頁、昭和三九年(ク)第一一四号同四一年三月二日大法廷決定・民集二〇巻三号三六〇頁、昭和三七年(ク)第六四号同四一年一二月二七日大法廷決定・民集二〇巻一〇号二二七九頁参照)。してみれば、裁判所が、本件について所論のように公開の法廷における対審を経ないで審理、裁判したとしても、憲法三一条、八二条に違反するものではない。

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