大阪高決昭和44年12月25日

 民法は広く配偶相続権を認め、被相続人の配偶者は常に遺留分を有する推定相続人とされたから(八九〇条、一〇二八条)、配偶者の一方から相手方に対して廃除を請求し得ることはもちろんである。そして、かかる配偶者間における廃除であつても、廃除は遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪することをもつてその目的とし、夫婦関係そのものには何らの影響を及ぼすものではないから、離婚と配偶者たる相続人の廃除とが全く別個の制度であることは明かである。すなわち、配偶者の一方に著しい非行がある場合、被相続人たる配偶者が相手方の非行を理由に離婚を請求するか、または離婚請求をせずして推定相続人の廃除を請求するかは、当該配偶者の自由であり、むしろ、夫婦関係は継続しながら(その意図なり理由が何であるかは問うところでない)、相手方の相続権のみを剥奪しておこうとするところに配偶者たる推定相続人に対する廃除を認めた法の趣旨があるものというべきであろう。
 そうだとしたら、具体的事件において廃除の原因として主張された事実が、たまたま離婚原因にも当るとしても、被相続人たる配偶者が離婚を請求せず、相続人の廃除を求めて裁判所にその申立をしたときは裁判所は夫婦間における離婚原因の有無などにかかわることなく、当該廃除の申立についてその当否を審理判断すべきであり、この点において原審が「配偶者たる推定相続人の廃除は、その廃除原因があるだけでなく、裁判上の離婚によることができないような特別な場合に限り許されるもの」であるとの見解のもとに、本件は右のような特別な場合に該当しないから、このような場合にまで推定相続人の廃除を求めることは、その必要がなく、許されないものとして抗告人の廃除の申立を却下したのは、法律の解釈を誤まり、ひいて審理不尽の違法を犯したものといわねばならない。

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