最判昭和30年12月26日

上告代理人神代宗衛の上告理由第五点について。
 被上告人の本訴請求中、確認請求に関する部分は、要するに、被上告人は、上告人Aの推定相続人であるところ、同上告人は同人所有の本件不動産について上告人Bと通謀して虚偽仮装の売買をなし、所有権移転登記を経由したので、被上告人は自己の相続権に基き、本訴において右売買の無効(売買契約より生じた法律関係の不存在)確認を求めるという趣旨であることが記録上明白である。しかし、確認の訴は、即時確定の利益がある場合、換言すれば、現に、原告の有する権利または法律的地位に危険または不安が存在し、これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り、許されるものであることはいうまでもない。しかるに、推定相続人は、単に、将来相続開始の際、被相続人の権利義務を包括的に承継すべき期待権を有するだけであつて、現在においては、未だ当然には、被相続人の個々の財産に対し権利を有するものではない。それ故単に被相続人たる上告人Aの所有に属する本件不動産について、たとえ被上告人主張の如き売買および登記がなされたとしても、法律上は、まだ現に被上告人の権利または法律的地位に危険または不安が生じ。確認判決をもつてこれを除去するに適する場合であるとはいい難く、その他本件において、被上告人が本件不動産の売買に関し即時確定の利益を有するものとは認められない。されば、被上告人の本訴請求中、確認請求の部分は法律上許容できないものであり、これを認容した原判決および右請求について実体上の判決をした第一審判決は、いずれも失当であり破棄を免れない。
 同第六点について。
 原審は、被上告人が上告人Aに代位して同上告人の有する本件登記抹消請求権を行使し得ると判断したのである。しかし、民法四二三条による債権者代位権は、債権者がその債権を保全するため債務者の権利を行使し得る権利であり、それは、ひつきよう債権の一種の効力に外ならないのである。しかるに被上告人は、単に上告人Aの推定相続人たる期待権を有するだけであつて、なんら同上告人に対し債権を有するものでないから、被上告人は当然にはなんら代位権を行使し得べきいわれはない。その他被上告人主張の事実関係の下において、被上告人の本件登記抹消の請求を是認すべき根拠は存しないから、原判決が、右請求を認容したのは失当であつて、この部分に関する原判決も破棄を免れない。

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