死因贈与と遺贈の遺留分減殺の順序【東京高判平成12年3月8日】

事案の概要

  1. 本件は、甲野太郎の相続人である原告らが、太郎の遺言により遺留分を侵害されたとして、右遺言に基づき不動産を取得した他の相続人である被告らに対し、侵害された持分に相当する所有権移転登記手続を求めたものである。
  2. 太郎は、平成七年七月三一日死亡した。太郎は、死亡当時、少なくとも、不動産として、横浜物件、東京建物を所有していたほか、預貯金として、株式会社第一勧業銀行及び郵便局に対する預貯金合計八九九万四四八四円を所有していた。
  3. 太郎は、平成三年五月二八日付けの遺言を残している。その遺言書には、次の記載がある。
     「私の財産を左のとおり相続させる。
     長男甲野一郎に横浜市旭区中沢町〈番地略〉の土地と家屋を、
     長男甲野春子に東京都墨田区石原〈番地略〉の店舗住宅を、
     二女乙川夏子と三女丙山秋子には第一勧業銀行二俣川支店の定期預金と普通預金、郵便局の定期預金と定額預金を等分すること」
  4. 太郎と被告春子間に、太郎が被告春子に宛て、東京建物及び本件借地権を死因贈与する旨記載された平成三年五月一九日付け死因贈与契約書が存在する。
  5. 東京建物については、太郎の死亡を始期として、被告春子に対し、平成三年五月一九日贈与(死因贈与)を原因とする所有権移転登記がされた。
  6. 原告らは、被告らに対し、いずれも平成七年一一月一一日到達の書面で、遺留分減殺請求の意思表示をした。

争点

  1. 死因贈与と遺贈の遺留分減殺の順序

判旨

死因贈与と遺贈の遺留分減殺の順序について

死因贈与も、生前贈与と同じく契約締結によって成立するものであるという点では、贈与としての性質を有していることは否定すべくもないのであるから、死因贈与は、遺贈と同様に取り扱うよりはむしろ贈与として取り扱うのが相当であり、ただ民法一〇三三条及び一〇三五条の趣旨にかんがみ、通常の生前贈与よりも遺贈に近い贈与として、遺贈に次いで、生前贈与より先に減殺の対象とすべきものと解するのが相当である。そして、特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言(以下「相続させる遺言」という。)による相続は、右の関係では遺贈と同様に解するのが相当であるから、本件においては、まず、原審相被告Eに対する相続させる遺言による相続が減殺の対象となるべきものであり、それによって被控訴人らの遺留分が回復されない場合に初めて、控訴人に対する死因贈与が減殺の対象になるというべきである。

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