死亡保険金受取人の変更が遺留分減殺請求の対象となるか【最判平成14年11月5日】

事案の概要

  1. 原告はAは故Eの妻、原告B及び同Cは子、被告は父であるが、原被告間には右Eの死亡保険金がいずれに属するかについて争いがあるので、原告らがこれが自己に属することの確認を求めた。
  2. Eは社団法人日本検数協会の戸畑現業所に勤務していたが、市立医療センターに平成九年七月一〇日に入院し九月二三日膵癌のため死亡した。
  3. Eの法定相続人は原告ら三名であり、法定相続分は原告Aが二分の一、原告Bおよび同Cが各四分の一である。したがって原告らの遺留分は、原告Aが四分の一、その余の原告が各八分の一となる。
  4. Eは日本生命保険相互会社との間で別紙生命保険契約目録一記載の生命保険契約を締結し、また協会は明治生命保険相互会社との間で従業員であるEを被保険者とする生命保険契約を締結していたが、Eは当初死亡保険金受取人を妻である原告Aとしていたところ、右受取人を原告Aから被告に変更した。
  5. Eと妻である原告Aとは平成二年ころから、Eの女性関係で不仲となり、平成七年一月からはEが家出をして別居し、原告AはEとの子である原告B及び同Cと、被告とともに自宅で生活していた。平成九年五月にEは原告Aに対し離婚調停を申し立てたが、死亡する前の同年九月に取り下げた。
  6. Eは、平成九年七月一〇日、同人所有の全ての財産を被告に遺贈する旨の遺言をした。原告らは被告に対し、一一月一九日到達の書面で右包括遺贈に対し遺留分減殺請求をした。

争点

  1. 死亡保険金受取人変更行為が遺留分減殺請求の対象となるか

判旨

保険金受取人変更行為が遺留分減殺請求の対象となるかについて

自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできないと解するのが相当である。けだし、死亡保険金請求権は、指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく、これらの者の相続財産を構成するものではないというべきであり(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)、また、死亡保険金請求権は、被保険者の死亡時に初めて発生するものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって、死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできないからである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする