遺留分減殺請求の対象となっている財産の一部のみについて価額弁償することができるか【最判平成12年7月11日】

事案の概要

  1. 本件は、亡Aの共同相続人の一人であり相続財産全部の包括遺贈を受けた上告人に対して、遺留分減殺請求をした他の共同相続人である被上告人らが、共有に帰した相続財産中の株式等について共有物の分割及び分割された株式に係る株券の引渡し等を請求したものである。
  2. 志村文藏(明治二七年八月五日生)と志村ミ子(明治二七年八月二二日生)は、大正一三年六月二六日に婚姻した夫婦であり、被上告人森脇美佐子(昭和三年五月二二日生、長女)、被上告人城戸洋子(昭和四年一二月三日生、二女)、被上告人志村建世(昭和八年五月一八日生、三男)及び上告人(大正一五年五月一六日生、二男)は、いずれも文藏とミ子の実子であり、志村幸世(大正九年一二月二日生。以下「幸世」という。)は、文藏とミ子の養子である。
  3. ミ子は、昭和四八年六月二四日死亡し、その遺産である各土地につき、文藏が一五分の五、被上告人ら、上告人及び幸世が各一五分の二の割合により相続した。
  4. 幸世は、昭和五九年二月八日死亡し、その遺産である各土地の持分一五分の二は、文藏が相続した。
  5. その結果、各土地については、文藏の持分が一五分の七、被上告人ら及び上告人の持分が各一五分の二の割合による共有関係が成立した。
  6. 文藏は、各土地についての一五分の七の持分のほかに、各不動産及び各株式を所有していた。
  7. 文藏は、昭和五七年二月二六日、東京法務局所属公証人瀬戸正二作成昭和五七年第一〇五号遺言公正証書により、文藏所有不動産及び本件株式を含む財産全部を上告人に包括して遺贈する旨遺言した。
  8. 文藏は、昭和五九年一〇月二七日死亡し、相続が開始した。
  9. 文藏の相続人は、被上告ら三名及び上告人の合計四名である。
  10. 被上告人らは、文藏の相続財産について各八分の一の遺留分を有しているところ、控訴人に対し、昭和六〇年二月二一日到達の内容証明郵便によって遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。
  11. その結果、本件不動産のうちの文藏所有不動産及び本件株式については、被上告人ら三名につき各持分八分の一、上告人につき持分八分の五の各割合による共有関係が成立した。

争点

  1. 遺留分減殺請求の対象となっている財産の一部のみについて価額弁償することができるか
  2. 単位未満株式を生じさせる現物分割の可否

判旨

遺留分減殺請求の対象となっている財産の一部のみについて価額弁償することができるかについて

受贈者又は受遺者は、民法一〇四一条一項に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還義務を免れることができるものと解すべきである。なぜならば、遺留分権利者のする返還請求は権利の対象たる各財産について観念されるのであるから、その返還義務を免れるための価額の弁償も返還請求に係る各個の財産についてなし得るものというべきであり、また、遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の一定割合を示すものであり、遺留分権利者が特定の財産を取得することが保障されているものではなく(民法一〇二八条ないし一〇三五条参照)、受贈者又は受遺者は、当該財産の価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければ、遺留分権利者からの返還請求を拒み得ないのであるから(最高裁昭和五三年(オ)第九〇七号同五四年七月一〇日第三小法廷判決・民集三三巻五号五六二頁)、右のように解したとしても、遺留分権利者の権利を害することにはならないからである。このことは、遺留分減殺の目的がそれぞれ異なる者に贈与又は遺贈された複数の財産である場合には、各受贈者又は各受遺者は各別に各財産について価額の弁償をすることができることからも肯認できるところである。そして、相続財産全部の包括遺贈の場合であっても、個々の財産についてみれば特定遺贈とその性質を異にするものではないから(最高裁平成三年(オ)第一七七二号同八年一月二六日第二小法廷判決・民集五〇巻一号一三二頁)、右に説示したことが妥当するのである。

単位未満株式を生じさせる現物分割の可否について

右各株式は証券取引所に上場されている株式であることは公知の事実であり、これらの株式については、一単位未満の株券の発行を請求することはできず、一単位未満の株式についてはその行使し得る権利内容及び譲渡における株主名簿への記載に制限がある(昭和五六年法律第七四号商法等の一部を改正する法律附則一五条一項一号、一六条、一八条一、三項)。したがって、分割された株式数が一単位の株式の倍数であるか、又はそれが一単位未満の場合には当該株式数の株券が現存しない限り、当該株式を表象する株券の引渡しを強制することはできず、一単位未満の株式では株式本来の権利を行使することはできないから、新たに一単位未満の株式を生じさせる分割方法では株式の現物分割の目的を全うすることができない。

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