遺留分算定の際に連帯保証債務額を控除すべきか【東京高判平成8年11月7日】

事案の概要

  1. 被相続人甲野花子は、平成三年二月二六日、死亡した。
  2. 花子の相続人は、控訴人甲野春子(長女)、甲野一郎(長男)、控訴人甲野二郎(二男)、被控訴人甲野夏子(二女)、被控訴人甲野秋子(三女)、乙山冬子(四女)及び控訴人甲野三郎(三男)の七名である。なお、被控訴人乙山春夫及び被控訴人乙山夏夫は、右乙山冬子の子供である。
     したがって、控訴人らはいずれも、花子の遺産につき、一四分の一の遺留分を有する。
  3. 花子は、平成二年二月二二日付の遺言公正証書により、同人の遺産のうち、
      〈1〉 別紙物件目録一の1及び2記載の土地の持分三分の一並びに同目録一の3記載の建物を被控訴人夏子に、
      〈2〉 同目録二記載の土地の持分二分の一を被控訴人秋子に、
      〈3〉 同目録三の1記載の土地の持分四分の一及び同目録三の2記載の土地の持分四〇〇〇分の一一三一を被控訴人春夫に、
      〈4〉 同目録三の1記載の土地の持分四分の一及び同目録三の2記載の土地の持分四〇〇〇分の一一三一を被控訴人夏夫に
    それぞれ遺贈し、これに基づき、花子から各被控訴人らに対し、右所有権ないしは持分権の移転登記が経由されている。
  4. 訴外株式会社吉川百貨店は、平成元年一〇月二七日三菱銀行町田支店から五〇〇〇万円を借り入れ、Aは同訴外会社の債務を連帯保証した。また、訴外ヨシモト商事株式会社は、平成二年三月一日ダイヤモンド抵当証券株式会社から五〇〇〇万円を借り入れ、Aは同訴外会社の債務を連帯保証した。そして、右のAの連帯保証債務について、前者につき平成五年五月二一日Aの遺産から五〇〇〇万円の弁済がされ、後者につき平成六年八月二三日Aの遺産から一〇〇〇万円の弁済がされた。
  5.  控訴人春子は被控訴人らに対し、遺留分減殺の意思表示をなし、右意思表示は、被控訴人夏子に対しては平成四年二月二五日、被控訴人秋子、被控訴人春夫及び被控訴人夏夫に対しては同月二〇日に、各到達した。
     また、控訴人二郎及び控訴人三郎も被控訴人らに対し、遺留分減殺の意思表示をなし、右意思表示は、少なくとも平成四年二月二一日までに、各被控訴人らに到達した。

争点

  1. 遺留分算定の際に連帯保証債務額を控除すべきか

判旨

遺留分算定の際に連帯保証債務額を控除すべきかについて

 保証債務(連帯保証債務を含む)は、保証人において将来現実にその債務を履行するか否か不確実であるばかりでなく、保証人が複数存在する場合もあり、その場合は履行の額も主たる債務の額と同額であるとは限らず、仮に将来その債務を履行した場合であっても、その履行よる出捐は、法律上は主たる債務者に対する求債権の行使によって返還を受けうるものであるから、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出指を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情が存在する場合でない限り、民法一〇二九条所定の「債務」に含まれないものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、仮にAが相続開始時において控訴人ら主張の連帯保証債務を負担していたとしても、当時、右の特段の事情が存在したことを認めるに足りる証拠は全くない。そうすると、控訴人ら主張の債務額を純資産額から控除することはできない。
 なお、控訴人らはAの遺産から右連帯保証債務につき弁済がされた旨を主張するが、右の特段の事情が本件の相続開始時に存在すると認められない以上、右弁済は、右認定判断を左右しない。

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