遺留分減殺請求により取得した不動産は消滅時効にかかるか【最判平成7年6月9日】

事案の概要

  1. 原告、橋本佳壽子及び被告前代表者亡井上得雄は、いずれも亡井上得就の子であり、被告は宗教法人法に基づく宗教法人である。得就は、昭和四三年一月七日死亡し、同日相続が開始した。右相続時における法定相続人は、原告、橋本及び得雄の三名であり、各人の遺留分はそれぞれ六分の一である。
  2. 本件土地は、一筆の土地であって、本訴請求土地と本件残余土地とで構成されている。本件土地は、登記簿上得就名義であったが、昭和三一年七月七日、同年四月八日付寄付を原因として、得就から被告に対する所有権移転登記がなされた。当時、被告の代表役員は得就であった。
  3. 原告及び橋本は、被告に対し、内容証明郵便(昭和五〇年一一月一七日付)をもって、遺留分減殺請求の意思表示をし同書面は同月一八日被告に到達した。
  4. 原告及び橋本は、被告に対し、昭和五一年一月、当庁に前件訴訟(当庁昭和五一年(ワ)第二六号共有持分移転登記手続請求事件)を提起した。
     前件訴訟において、橋本は、主位的に本訴請求土地につき所有権移転登記請求を、予備的に本件土地につき六分の一の共有持分の移転登記請求をし、原告は、主位的に本件残余土地につき六分の一の共有持分の移転登記請求を、予備的に本件土地につき六分の一の共有持分の移転登記請求をした。その結果、遺留分減殺請求により共有持分を有することを理由として、橋本は本件土地につき六分の一の共有持分移転登記請求権を、原告は本件土地のうち本件残余土地につき六分の一の共有持分移転登記請求権を、それぞれ有することが確定した。
  5. 本件訴訟は、昭和六三年四月一一日、提起されたが、控訴審は、「予備的請求とは、主位的請求の確定的認容を解除条件とするものであるから、前件訴訟において控訴人の主位的請求が認容されて確定した以上、前件請求における控訴人の予備的請求は遡及的に消滅したものと解するのが相当であって、前件訴訟において控訴人の請求についての判決の脱漏があったとみるべきではない。」ことを理由に、本訴請求土地につき、原告が、本件訴訟においてその六分の一の共有持分移転登記手続を求めることは、「前件訴訟において訴訟物となっていないことから、前件訴訟の一事不再理の効力の及ぶところではな」いとして、差戻前の一審判決を取り消し、原審に差し戻した。被告は上告したが、上告審においても、「本件訴えは、民訴法二三一条の二重起訴禁止に触れるものではない」とされ、上告棄却された。

争点

  1. 相続回復請求権が時効消滅した場合、遺留分減殺請求に基づく共有持分移転登記請求権の行使はできないのか

判旨

相続回復請求権が時効消滅した場合、遺留分減殺請求に基づく共有持分移転登記請求権の行使はできないのかについて

遺留分権利者が特定の不動産の贈与につき減殺請求をした場合には、受贈者が取得した所有権は遺留分を侵害する限度で当然に右遺留分権利者に帰属することになるから(最高裁昭和五〇年(オ)第九二〇号同五一年八月三〇日第二小法廷判決・民集三〇巻七号七六八頁、最高裁昭和五三年(オ)第一九〇号同五七年三月四日第一小法廷判決・民集三六巻三号二四一頁)、遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記手続請求権は、時効によって消滅することはないものと解すべきである。

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