相続人に対する贈与が遺留分減殺の対象になるか【最判平成10年3月24日】

事案の概要

  1. Aは、昭和六二年八月二〇日に死亡した。Aの相続人は、妻である上告人B、子である同C及び被上告人Dである。同Eは同Dの配偶者であり、同峰成及び同繁久は同Dの子である。
  2. Aは、昭和五三年当時、第一審判決添付物件目録1ないし9記載の土地(以下、同目録記載の番号により「1の土地」などという。)を所有していたが、同年一〇月一六日に一、3及び6の土地を被上告人E、同峰成及び同繁久に、4の土地を同Dにそれぞれ贈与し、同五四年一月一六日に2及び5の土地を被上告人らに贈与した。

 

争点

  1. 相続人に対する贈与が遺留分減殺の対象になるか

判旨

相続人に対する贈与が遺留分減殺の対象になるかについて

民法九〇三条一項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法一〇三〇条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である。けだし、民法九〇三条一項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法一〇四四条、九〇三条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法一〇三〇条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

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