包括遺贈に対して遺留分減殺請求権を行使した場合に遺産分割の対象となるか【最判平成8年1月26日】

事案の概要

  1. Aは、本件不動産を所有していた。
  2. Aは、昭和五九年六月四日付け公正証書により、本件不動産を含む財産全部を上告人に包括して遺贈する旨遺言した。
  3. Aは、昭和六二年七月六日死亡し、相続が開始した。
  4. Aの相続人は、同人の妻であるB及び上告人、被上告人を含む六人の子である。
  5. 上告人は、同年一〇月一五日、本件不動産につき前記遺贈を登記原因として所有権移転登記手続をし、その旨の登記がされた。
  6. 被上告人は、Aの相続財産について二四分の一の遺留分を有している。
  7. 被上告人は、上告人に対し、同年一一月二七日到達の書面で遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。
  8. 上告人は、同年一一月三〇日、本件不動産のうち原判決添付別紙物件目録(四)記載の土地(以下「(四)土地」という。)をC外二名に代金二億一九〇〇万〇〇七四円で売却し、同日、その旨の所有権移転登記がされた。
  9. 被上告人の本件請求は、前記遺留分減殺請求により被上告人が本件不動産につき遺留分割合に相当する二四分の一の共有持分権を有するに至ったとして、(四)土地を除く本件不動産について遺留分減殺を原因とする所有権一部移転登記手続を求めるとともに、上告人による(四)土地の売買は右共有持分権を侵害するもので不法行為を構成するなどとして、前記売買代金の二四分の一に当たる九一二万五〇〇三円の支払等を求めるものである。

争点

  1. 包括遺贈に対して遺留分減殺請求権を行使した場合に遺産分割の対象となるか

判旨

包括遺贈に対して遺留分減殺請求権を行使した場合に遺産分割の対象となるかについて

 遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。
 特定遺贈が効力を生ずると、特定遺贈の目的とされた特定の財産は何らの行為を要せずして直ちに受遺者に帰属し、遺産分割の対象となることはなく、また、民法は、遺留分減殺請求を減殺請求をした者の遺留分を保全するに必要な限度で認め(一〇三一条)、遺留分減殺請求権を行使するか否か、これを放棄するか否かを遺留分権利者の意思にゆだね(一〇三一条、一〇四三条参照)、減殺の結果生ずる法律関係を、相続財産との関係としてではなく、請求者と受贈者、受遺者等との個別的な関係として規定する(一〇三六条、一〇三七条、一〇三九条、一〇四〇条、一〇四一条参照)など、遺留分減殺請求権行使の効果が減殺請求をした遺留分権利者と受贈者、受遺者等との関係で個別的に生ずるものとしていることがうかがえるから、特定遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解される。そして、遺言者の財産全部についての包括遺贈は、遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもので、その限りで特定遺贈とその性質を異にするものではないからである。

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