遺留分権減殺に対する価額弁償の抗弁における価額算定の基準時【最判昭和51年8月30日】

事案の概要

  1. 一審原告らと一審被告の実父亡小西定平は、昭和三二年一二月七日死亡したが、その相続人は、右三名のほか、亡小西定平の長男亡小西薫の代襲者である訴外小西巌雄、孝夫の五名であり、一審原告らの法定相続分はいずれも四分の一である。したがって、一審原告らの有する遺留分の割合額は、民法一〇二八条一号および同法一〇四四条が準用する同法九〇〇条四号により、それぞれ八分の一である。
  2. 被相続人である亡小西定平が死亡の時(相続開始時)に有した財産は別紙目録一ないし五記載の各土地以外にはなかった。
  3. 亡小西定平が別紙目録一ないし五記載の各土地を適式の遺言公正証書により一審被告に遺贈した。
  4. 一審被告は、昭和四八年五月一八日の当審口頭弁論期日において、民法一〇四一条一項に基づいて、その価額弁償を選択した。
  5. 一審被告が一審原告らに対し、別紙目録三ないし五記載の各土地については、民法一〇四一条一項に基づいて、その弁償すべき価額をそれぞれ算定する必要があった。

争点

  1. 遺留分権減殺に対する価額弁償の抗弁における価額算定の基準時

判旨

遺留分権減殺に対する価額弁償の抗弁における価額算定の基準時について

遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するものと解するのが相当であつて(最高裁昭和三三年(オ)第五〇二号同三五年七月一九日第三小法廷判決・民集一四巻九号一七七九頁、最高裁昭和四〇年(オ)第一〇八四号同四一年七月一四日第一小法廷判決・民集二〇巻六号一一八三頁、最高裁昭和四二年(オ)第一四六五号同四四年一月二八日第三小法廷判決・裁判集民事九四号一五頁参照)、侵害された遺留分の回復方法としては贈与又は遺贈の目的物を返還すべきものであるが、民法一〇四一条一項が、目的物の価額を弁償することによつて目的物返還義務を免れうるとして、目的物を返還するか、価額を弁償するかを義務者である受贈者又は受遺者の決するところに委ねたのは、価額の弁償を認めても遺留分権利者の生活保障上支障をきたすことにはならず、一方これを認めることによつて、被相続人の意思を尊重しつつ、すでに目的物の上に利害関係を生じた受贈者又は受遺者と遺留分権利者との利益の調和をもはかることができるとの理由に基づくものと解されるが、それ以上に、受贈者又は受遺者に経済的な利益を与えることを目的とするものと解すべき理由はないから、遺留分権利者の叙上の地位を考慮するときは、価額弁償は目的物の返還に代わるものとしてこれと等価であるべきことが当然に前提とされているものと解されるのである。このようなところからすると、価額弁償における価額算定の基準時は、現実に弁償がされる時であり、遺留分権利者において当該価額弁償を請求する訴訟にあつては現実に弁償がされる時に最も接着した時点としての事実審口頭弁論終結の時であると解するのが相当である。

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