負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約を取消すことが可能か【最判昭和57年4月30日】

事案の概要

  1. 原告清水ひでは遺言者亡清水市郎右ェ門(以下、「遺言者」という。)の妻、原告清水英市は右両名の長男、被告清水恒一は同じく二男、被告島倉幸子は同じく三女、被告島崎良夫は本件遺言の遺言執行者である。
  2. 遺言者は、昭和四九年一一月一六日作成の遺言書(以下、「遺言書(一)」という。)及び昭和五二年九月二二日作成の遺言書(以下、「遺言書(二)」という。)をもつてそれぞれ遺言をなし、富山家庭裁判所は昭和五四年八月七日同裁判所昭和五四年(家)第四五八号遺言書検認事件として右各遺言書の検認をなした。
  3. しかしながら、次の理由により本件遺言は無効である。
    (一)(1) 遺言書(一)には昭和五二年九月二二日追加遺言書である遺言書(二)を作成した旨の付記及びこれについての遺言者の署名押印がなく、また、遺言書(二)にも昭和四九年一一月作成の遺言書(一)に対する追加遺言である旨の付記及びこれについての遺言者の署名押印がない。
  4. 遺言者は、原告清水英市との間で、昭和三五年五月三日、左記のとおり死因贈与契約を締結した。
       記
    (1) 原告清水英市は遺言者に対し、同原告が訴外三菱倉庫株式会社に在職中毎月三、〇〇〇円以上をその月の一五日までに送金し、さらに年二回の定期賞与金の半額を贈与する。
    (2) 同原告が右債務を履行した場合は、遺言者はその遺産全部を遺言者の死亡と同時に同原告に贈与する。
  5. 被告は、死因贈与契約がなされたとしても、右契約はその後になされた本件遺言によつて取消されたものとみなされる(民法五四四条による同法一〇二二条、一〇二三条の準用)と主張した。

争点

  1. 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約を取消すことが可能か

判旨

負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約を取消すことが可能かについて

負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約に基づいて受贈者が約旨に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、贈与者の最終意思を尊重するの余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないから、右贈与契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、右契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右負担の履行状況にもかかわらず負担付死因贈与契約の全部又は一部の取消をすることがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、遺言の取消に関する民法一〇二二条、一〇二三条の各規定を準用するのは相当でないと解すべきである。

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