裁判上の和解をした場合に死因贈与の取消ができないとした事例【最判昭和58年1月24日】

事案の概要

  1. 本件土地は、上告人の兄である亡Aの所有名義に登記されていたが、上告人の弟であり被上告人B、同C、同D、同E、同Fの被相続人である亡Gが占有耕作していた。
  2. Aは、昭和二四年、本件土地は登記名義どおり自己の所有に属する旨主張し、Gを相手取り、千葉地方裁判所木更津支部に対し、本件土地の明渡及び損害賠償の支払を求める訴えを提起したところ(同庁昭和二四年(ワ)第九号)、同裁判所は、昭和二七年一月一〇日、本件土地は真実はAの所有でなくGの所有に属するとの理由を付し、Aの請求を棄却する判決を言い渡した。
  3. Aは、右判決を不服として東京高等裁判所に控訴したが(同庁昭和二七年(ネ)第三二号)、昭和二八年一一月一九日、裁判所の和解勧試に基づき、(イ)Gは、本件土地がAの所有であることを承認すること、(ロ)Aは、G及びその子孫に対し、本件土地を無償で耕作する権利を与え、G及びその子孫をして右権利を失わしめるような一切の処分をしないこと、(ハ)Aが死亡したときは、本件土地はG及びその相続人に対し贈与すること、(ニ)A、G間には、本件以外の係争事件があるけれども、これらについても爾後互いに和協の道を講ずる意思を表明すること、(ホ)A、Gが現に耕作している農地についての作業は相互に妨害しないこと、(ヘ)Aはその余の請求を放棄すること、を条項とする裁判上の和解が成立した。
  4. Gは昭和三八年一二月一九日死亡し、妻である被上告人B、子である被上告人C、同D、同E、同Fがその権利義務を承継し、Aは昭和四七年四月三〇日死亡し、妻である被上告人H、母である亡Iがその権利義務を承継し、更に、右Iは昭和四九年一一月一九日死亡し、子である上告人のほか被上告人B、同Hを除くその余の被上告人らがその権利義務を承継した。

争点

  1. 裁判上の和解をした上記事案において死因贈与の取消をすることができるか

判旨

裁判上の和解をした上記事案において死因贈与の取消をすることができるかについて

Aは、本件土地について登記名義どおりの所有権を主張して提起した訴訟の第一審で敗訴し、その第二審で成立した裁判上の和解において、第一審で真実の所有者であると認められたGから登記名義どおりの所有権の承認を受ける代わりに、G及びその子孫に対して本件土地を無償で耕作する権利を与えて占有耕作の現状を承認し、しかも、右権利を失わせるような一切の処分をしないことを約定するとともに、Aが死亡したときは本件土地をG及びその相続人に贈与することを約定したものであつて、右のような贈与に至る経過、それが裁判上の和解でされたという特殊な態様及び和解条項の内容等を総合すれば、本件の死因贈与は、贈与者であるAにおいて自由には取り消すことができないものと解するのが相当である。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする