死因贈与に遺言の取消に関する民法1022条が準用されるか【最判昭和47年5月25日】

事案の概要

  1. 控訴人らの父亡井手篤太郎は昭和三六年五月一五日本件宅地を訴外小池米吉より買受けて、その所有権を取得(同月一七日登記経由)したうえ、同年七月頃右宅地上に本件建物を新築してこれを所有していた。
  2. 被控訴人は、篤太郎の生存中、同人を相手方として、昭和三八年四月二一日同人より本件宅地建物の贈与を受けその所有権を取得したと主張して、福岡地方裁判所久留米支部に仮登記仮処分の申請をなし(同庁昭和四一年(モ)第五号事件)、これが仮処分決定を得て、本件宅地につき福岡法務局三井出張所昭和四一年一月一二日受付第一五八号をもつて、本件建物につき同法務局同出張所同日受付第一五六号をもつて各所有権移転の仮登記をなした。
  3. 被控訴人は、昭和三六年四月三日篤太郎の後妻として嫁ぎ同年九月一九日婚姻の届出をなし、本件建物に同居したが、当時篤太郎は六七歳の老人で二二年の年令差があるため、同人の死後における自己の生活に不安を抱き、篤太郎もまたこれを配慮し、自己の死後における被控訴人の生活の方策をたて、かつ自己の遺産相続について、控訴人らと被控訴人が争うことを予防すべく考え、昭和三八年四月二一日、控訴人井手一方に篤太郎、被控訴人夫婦と控訴人大山、同久富を除くその余の控訴人が集まり、花見の宴を催した際、同人らに右自己の考えを述べるとともに、被控訴人および訴控人らに自己の主要な財産を、死亡により効力を生ずる死因贈与をなす旨申し出で、右出席者一同もこれを了承してその口述内容を書面に作成した。
  4. 篤太郎は昭和三八年四月二一日、被控訴人に本件宅地建物全部を死因贈与した。
  5. 篤太郎は弁護士古賀久仁衛に前示被控訴人に対する贈与契約の取消方を委任し、同弁護士は被控訴人に対し、昭和四一年一月一四日到達の同月一一日付内容証明郵便をもつて、民法第七五四条の夫婦間の契約取消権に基づいて右契約を取り消す旨の意思表示をなした。

争点

  1. 死因贈与に遺言の取消に関する民法1022条が準用されるか

判旨

死因贈与に遺言の取消に関する民法1022条が準用されるかについて

おもうに、死因贈与については、遺言の取消に関する民法一〇二二条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。けだし、死因贈与は贈与者の死亡によつて贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによつて決するのを相当とするからである。そして、贈与者のかかる死因贈与の取消権と贈与が配偶者に対してなされた場合における贈与者の有する夫婦間の契約取消権とは、別個独立の権利であるから、これらのうち一つの取消権行使の効力が否定される場合であつても、他の取消権行使の効力を認めうることはいうまでもない。

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