遺言執行者に賃借権確認請求訴訟の被告適格があるか【最判平成10年2月27日】

事案の概要

  1. 本件土地を所有していたAは、平成三年七月三日に死亡し、その相続人はB(長男)、C(二男)、被上告人(三男)、D(長女)の四名である。
  2. Aを遺言者とする遺言公正証書が存在し、その内容の要旨は次のとおりである。
     (1) 本件土地の持分二分の一をBに、持分二分の一を被上告人に相続させる。
     (2) 東京都新宿区所在の土地建物を博美に相続させる。
     (3) 預貯金のうちから二〇〇〇万円をDに相続させる。
     (4) 預貯金の残額は、遺言執行者の責任において、遺言者の負担すべき公租公課、医療費その他相続税の支払等に充当すること。
     (5) 博美を祖先の祭祀主宰者及び遺言執行者に指定する。
  3. 被上告人は、本件土地を占有している。

争点

  1. 遺言執行者に賃借権確認請求訴訟の被告適格があるか

判旨

遺言執行者に賃借権確認請求訴訟の被告適格があるかについて

 特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言をした遺言者の意思は、右の相続人に相続開始と同時に遺産分割手続を経ることなく当該不動産の所有権を取得させることにあるから(最高裁平成元年(オ)第一七四号同三年四月一九日第二小法廷判決・民集四五巻四号四七七頁参照)、その占有、管理についても、右の相続人が相続開始時から所有権に基づき自らこれを行うことを期待しているのが通常であると考えられ、右の趣旨の遺言がされた場合においては、遺言執行者があるときでも遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者は、当該不動産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務を負わないと解される。そうすると、遺言執行者があるときであっても、遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、右特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人であるというべきである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする