受遺者に遺贈による所有権移転登記がされている場合における相続人による抹消登記手続請求訴訟の被告適格【最判昭和51年7月19日】

事案の概要

  1. 本件土地が亡石井正次の所有であつた
  2. 同人が昭和三六年一二月一〇日死亡した
  3. 被控訴人が正次の養子である
  4. 正次の妻は被控訴人の母であるタケであつた
  5. 被控訴人及びタケが正次の相続人である
  6. 本件土地を石井のぶに遺贈する旨を内容とする本件公正証書が昭和三四年五月二六日作成された
  7. 本件土地につき石井のぶを権利者とする昭和三七年五月一一日受付第七二四九号遺贈を原因とする所有権移転仮登記がなされている
  8. 本件土地につき被控訴人を権利者とする昭和四二年九月五日受付第三九三七号相続を原因とする所有権移転登記が経由されている

争点

  1. 受遺者に遺贈による所有権移転登記がされている場合における相続人による抹消登記手続請求訴訟の被告適格

判旨

受遺者に遺贈による所有権移転登記がされている場合における相続人による抹消登記手続請求訴訟の被告適格について

 遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し(民法一〇一二条)、遺贈の目的不動産につき相続人により相続登記が経由されている場合には、右相続人に対し右登記の抹消登記手続を求める訴を提起することができるのであり、また遺言執行者がある場合に、相続人は相続財産についての処分権を失い、右処分権は遺言執行者に帰属するので(民法一〇一三条、一〇一二条)、受遺者が遺贈義務の履行を求めて訴を提起するときは遺言執行者を相続人の訴訟担当者として被告とすべきである(最高裁昭和四二年(オ)第一〇二三号、同四三年五月三一日第二小法廷判決・民集二二巻五号一一三七頁)。更に、相続人は遺言執行者を被告として、遺言の無効を主張し、相続財産について自己が持分権を有することの確認を求める訴を提起することができるのである(最高裁昭和二九年(オ)第八七五号、同三一年九月一八日第三小法廷判決・民集一〇巻九号一一六〇頁)。右のように、遺言執行者は、遺言に関し、受遺者あるいは相続人のため、自己の名において、原告あるいは被告となるのであるが、以上の各場合と異なり、遺贈の目的不動産につき遺言の執行としてすでに受遺者宛に遺贈による所有権移転登記あるいは所有権移転仮登記がされているときに相続人が右登記の抹消登記手続を求める場合においては、相続人は、遺言執行者ではなく、受遺者を被告として訴を提起すべきであると解するのが相当である。けだし、かかる場合、遺言執行者において、受遺者のため相続人の抹消登記手続請求を争い、その登記の保持につとめることは、遺言の執行に関係ないことではないが、それ自体遺言の執行ではないし、一旦遺言の執行として受遺者宛に登記が経由された後は、右登記についての権利義務はひとり受遺者に帰属し、遺言執行者が右登記について権利義務を有すると解することはできないからである。

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