親権者の一方が遺贈するときに他方の親権者の管理権を奪うことができるか【東京高判平成19年5月30日】

事案の概要

  1. 被控訴人(昭和40年10月*日生)は、昭雄(昭和39年2月*日生)と平成3年8月1日婚姻し、両名間に、長女の一美(平成5年5月*日生)、長男の一郎(平成7年11月*日生)、二男の二郎(平成10年6月*日生。)をもうけた。昭雄の父は控訴人北河太郎、昭雄の母は控訴人北河花子であり、両名とも広島市内に居住している。
  2. 被控訴人は、平成16年10月12日に子ら3名とともに昭雄と生活していた被控訴人肩書住所地の自宅を出て昭雄と別居した。昭雄は、同年11月1日、被控訴人を相手方として長野家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが、同調停手続において被控訴人から離婚を求められ、平成17年2月2日(推定)に自殺した。
  3. 昭雄は、平成17年1月31日付け遺言状を作成しており、その内容は次のとおりである(甲2)。
     「 遺言状
     1 今回の私の自死は、誰の責任でもなく、私自身が決し、行うものです。
     2 葬式は、私の自宅で(越****-1)慎しく行ってください。
     3 遺骨は、南方の海洋に散骨してください。(一美・一郎・二郎の手で)
     4 私の財産と生命保険等によって受け取る金員の全ては3人の子供の養育の為のみに使用して下さい。その他の目的の為には一切遣わないこと。
     (財産目録添付)
     5 私の自宅は、北川の姓を名のり、又北川家の血脈を継承する人間のみが出入り、使用して下さい。決して取りこわさぬこと。
     6 4に述べた金員の管理は、北川家に(広島)よって行われるものとして下さい。又野村証券甲府(支)に預け入れている外国債券については、満期日まで、解約しないこと。
     7 私の葬式は葉子が行うこと。
     8 会社の寮の整理は葉子が行うこと。
     平成17年1月31日 北川昭雄〈印〉」
  4. 昭雄の死亡により相続が開始し、法定相続人は被控訴人と子ら3名で、法定相続分は被控訴人が2分の1、子ら3名が各6分の1であり、被控訴人が子ら3名の親権者であるところ、控訴人らは子ら3名に帰属する権利について被控訴人に管理権がないと主張して争っている。

争点

  1. 親権者の一方が遺贈するときに他方の親権者の管理権を奪うことができるか

判旨

親権者の一方が遺贈するときに他方の親権者の管理権を奪うことができるかについて

 民法830条1項は、「無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。」と規定し、未成年の子に財産を無償で与えた者の意思を尊重して、親権者の管理権を奪いうるものとしているところ、第三者とは、親権者及び未成年者以外の者をいい、親権者が2人ある場合に、その一方が、子に無償で財産を与えるときに他方の親権者の管理権を奪うことができるかについては、無償で子に財産を与える者の意思を尊重し、この者の指定する者にその財産を管理させることによって財産を受けられる子の利益を保護しようとする趣旨からいえば、財産の贈与者が第三者であろうと親権者であろうと区別する必要はないというべきである(なお、親権を行う父母の一方が未成年の子に対して遺贈する場合、民法830条に基づき遺贈にかかる財産の管理者を指定し得ることは、次のことから明らかである。そのような遺言者は、仮に上記の見解が採用できないものであっても、遺言の効力が生じたときは親権者ではなくなっているから、同条1項にいう「第三者」に該当する。次に、遺言事項は原則として法定されているが、被相続人は民法897条1項に基づく祖先の祭祀を主宰すべき者の指定を遺言によりすることができるものと解釈されており、遺言事項として明文の規定のない事項も遺言によりすることができる例がある。そして、配偶者の一方が不倫の相手方と同居している等の理由で離婚訴訟を提起した他方配偶者が、末期ガンの宣告を受けたため、未成年の子らに財産を遺贈するような場合、生存配偶者以外の者に遺贈にかかる財産を管理してもらう実際の必要性があり、その他、親権を行う父母の一方が未成年の子に遺贈した財産の管理を生存配偶者以外の者に委託することを望む場合は、これを肯定すべきである。)。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする