相続人に遺産全部を包括して遺贈する旨の遺言は全部包括遺贈か【仙台高判平成10年1月22日】

事案の概要

  1. Aは、昭和六二年一二月一四日、遺言公正証書をもって、「遺言者はその所有に属する遺産全部を包括して遺言者の長男X(昭和一四年○月○日生)に遺贈する。」との遺言をなし、同人は平成八年六月四日死亡した。右のとおり、原告は、Aの長男であり、その相続人の一人である。
  2. 原告は、同年九月二日、被告に対し、戸籍謄本等と共に右遺言書を「相続を証する書面」として、別紙物件目録記載の各不動産につき、相続を登記原因とするAから原告への所有権移転登記を申請した。
  3. 被告は、同月一二日、右申請に対し、申請書に必要な書面(相続を証する書面)の添付がないとの理由で、不動産登記法四九条八号の規定により、これを却下する旨の決定をした。

争点

  1. 相続人に遺産全部を包括して遺贈する旨の遺言は全部包括遺贈か

判旨

相続人に遺産全部を包括して遺贈する旨の遺言は全部包括遺贈かについて

 本件遺言書の作成には、法律の専門家である弁護士(証人として立ち会い、遺言執行者に指定されている。甲一)や公証人(遺言の方式は公正証書である。)が関与していること、それなのに、「相続させる」という文言による遺言がなされず、全部包括遺贈であることを明言する遺言がなされていること、登記実務においては、被相続人が相続人中の一部の者に対し相続財産の全部を包括贈与する旨の遺言がある場合には、その者のために遺贈を登記原因として権利移転の登記をすることとされているところ(昭和三八年一一月二〇日民事甲第三一一九号民事局長電報回答二項前段、乙一)、本件遺言書では、他の相続人の関与なしに右移転登記の申請ができるように遺言執行者も指定されていることなどを考慮するならば、本件遺言はその文言に従い、二で説示した全部包括遺贈の趣旨であると解すべきである。

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