相続させる遺言において直ちに相続により承継しない特段の事情があるか【東京高判平成6年2月25日】

事案の概要

  1. 控訴人及び被控訴人らの父である亡桂は、旧借地を岩井から賃借し、右土地上に旧建物を所有していた。
  2. 右土地のうち本件土地について、昭和五四年三月三日、同月二日交換を原因として岩井から桂名義に所有権移転登記が経由され、控訴人は、本件土地上に本件建物を建築し、同年八月二一日本件建物につき控訴人と朝子の持分を各二分の一とする所有権保存登記がされた。
  3. 桂は昭和五八年一〇月四日五反田公証役場において公正証書遺言をした。その内容は、本件土地を公道に面し南北に細長い短冊状に四分割し、西側から順にそれぞれ相続人である控訴人、史子、被控訴人高橋及び同中尾に相続させるというものである。
  4. 桂は昭和六二年一二月一五日死亡し、被控訴人らは、本件遺言に基づいて、本件土地を別分筆の上、それぞれにつき相続を原因とする所有権移転登記を経た。
  5. 現在、朝子が本件建物を所有し、控訴人らがこれに居住している。

争点

  1. 相続させる遺言において直ちに相続により承継しない特段の事情があるか

判旨

相続させる遺言において直ちに相続により承継しない特段の事情があるかについて

 本件遺言は、「本件土地を四分割し、控訴人高橋にA土地を、控訴人中尾にB土地をそれぞれ相続させる。」というものであり、本件遺言の記載上遺贈と解すべき特段の事情も認められないから、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解するのが相当である。そして、この場合、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されると解される(最高裁平成元年(オ)第一七四号、同三年四月一九日第二小法廷判決等参照)。本件では右の特段の事情があるとは認められない。なお、確かに本件遺言当時からA土地、B土地にまたがって朝子所有(現在は被控訴人所有)の建物が存在していた(この点は当事者間に争いがない。)ため、本件土地を遺言どおり四分割すると、本件建物の措置を巡り相続人間で紛争の生じることが予想されていたとしても、前記のように、本件遺言は本件土地を四分割し、それぞれの土地をそれぞれの相続人に単独で相続させる趣旨のものであることは明白であって、これ以上遺産分割の協議、審判を経る余地はないものであるから、本件遺言の解釈として、遺産分割の協議、審判を経るまではA土地、B土地の所有権が控訴人らに承継されないと解する余地はないというべきである。なおまた、本件遺言によりA土地、B土地の所有権が控訴人らに当然承継されると解釈することが即本件建物の除去に繋がるともいえないものである。すなわち、後記のように本件土地には本件建物使用を目的とした使用貸借関係が設定されているから、本件建物が控訴人らによるA土地、B土地の相続後もそのまま存続できるか否かは右使用貸借契約の帰趨にかかっているのであり、相続により右使用貸借契約上の貸主の地位を承継した被控訴人らが使用貸借契約解約の意思表示をし、その結果として使用貸借契約が終了しない限り、本件建物はそのまま本件土地上に存続し得るのである。このように遺言により本件土地が相続人に当然に承継されると解することと、本件建物除去の問題は直ちに結び付くものではないから、遺言者が遺言当時遺言の結果本件建物が除去されることまでは望んでいなかったとしても、それ故に本件遺言は遺言の効力発生時に直ちに承継関係が生ずるものではなく、遺産分割手続を経ることを要求しているという解釈に繋がるものではないというべきである。

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