危急時遺言に日付の記載がなくとも有効か【最判昭和47年3月17日】

事案の概要

  1. 本件遺言書は昭和四三年一月二九日に完成したが、昭和四三年一月二八日と記載されていた。
  2. 筆記者である証人が、筆記内容を清書した書面に遺言者Aの現在しない場所で署名捺印をし、他の証人二名の署名を得たうえ、右証人らの立会いのもとに遺言者に読み聞かせ、その後、遺言者の現在しない場所すなわち遺言執行者に指定された者の法律事務所で、右証人二名が捺印し、もつて署名捺印を完成した。

争点

  1. 危急時遺言に日付の記載がなくとも有効か
  2. 危急時遺言は遺言者がいない場所で証人が署名捺印しても有効か

判旨

危急時遺言に日付の記載がなくとも有効かについて

同条所定の方式により遺言をする場合において、遺言者が口授した遺言の趣旨を記載した書面に、遺言をした日附ないし証書を作成した日附を記載することが右遺言の方式として要求されていないことは、同条の規定に徴して明らかであつて、日附の記載はその有効要件ではないと解すべきである。したがつて、右遺言書を作成した証人においてこれに日附を記載した場合でも、右は遺言のなされた日を証明するための資料としての意義を有するにとどまるから、遺言書作成の日として記載された日附に正確性を欠くことがあつたとしても、直ちに右の方式による遺言を無効ならしめるものではない。

危急時遺言は遺言者がいない場所で証人が署名捺印しても有効かについて

 民法九七六条所定の危急時遺言が、疾病その他の事由によつて死亡の危急に迫つた者が遺言をしようとするときに認められた特別の方式であること、右遺言にあたつて立会証人のする署名捺印は、遺言者により口授された遺言の趣旨の筆記が正確であることを各証人において証明するためのものであつて、同条の遺言は右の署名捺印をもつて完成するものであること、右遺言は家庭裁判所の確認を得ることをその有効要件とするが、その期間は遺言の日から二〇日以内に制限されていることなどにかんがみれば、右の署名捺印は、遺言者の口授に従つて筆記された遺言の内容を遺言者および他の証人に読み聞かせたのち、その場でなされるのが本来の趣旨とは解すべきであるが、本件のように、筆記者である証人が、筆記内容を清書した書面に遺言者Aの現在しない場所で署名捺印をし、他の証人二名の署名を得たうえ、右証人らの立会いのもとに遺言者に読み聞かせ、その後、遺言者の現在しない場所すなわち遺言執行者に指定された者の法律事務所で、右証人二名が捺印し、もつて署名捺印を完成した場合であつても、その署名捺印が筆記内容に変改を加えた疑いを挾む余地のない事情のもとに遺言書作成の一連の過程に従つて遅滞なくなされたものと認められるときは、いまだ署名捺印によつて筆記の正確性を担保しようとする同条の趣旨を害するものとはいえないから、その署名捺印は同条の方式に則つたものとして遺言の効力を認めるに妨げないと解すべきである。そして、昭和四三年一月二七日深夜から翌二八日午前零時過ぎまでの間遺言者による口授がなされ、同二八日午後九時ごろ遺言者に対する読み聞かせをなし、翌二九日午前中に署名捺印を完成した等原判示の遺言書作成の経緯に照らせば、本件遺言書の作成は同条の要件をみたすものというべきである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする