特別方式による遺言をなすには客観的に死亡の危急が切迫していることが必要か【大阪高判昭和34年12月24日】

事案の概要

  1. 控訴人が、訴外亡小谷松之助の四男であること、、同月一二日附を以て被控訴人西山から京都家庭裁判所に対し右遺言確認の申請をなし、同月二六日附で同裁判所の確認を得た
  2. 右松之助が昭和二四年五月八日被控訴人渡辺、訴外(原審共同被告)谷口良吉、同大谷幸一郎の三名を証人として立会わせ原判決末尾添付の目録記載の如き特別方式による遺言をなした
  3. 同月一二日附を以て被控訴人西山から京都家庭裁判所に対し右遺言確認の申請をなし、同月二六日附で同裁判所の確認を得た
  4. 被控訴人西山が昭和二五年二月二四日右遺贈を原因として原判決末尾添附の目録記載の不動産につき自己名義に所有権移転登記手続をした
  5. 右松之助の昭和二四年五月八日当時の病状は顔面貧血羸痩し、熱は三六度四分、脈搏六八、呼吸速進し、肝臓が二横指位腫れ、腹まわり八二で腹部に水が非常に多くたまり、足背にはフシが相当あり胃潰瘍か胃癌の症状を呈し、相当な重態で絶対安静を要する状態にあつたが、一、両日中に死亡するかもしれぬといつた所謂危篤の状態にはなかつた

争点

  1. 特別方式による遺言をなすには客観的に死亡の危急が切迫していることが必要か

判旨

特別方式による遺言をなすには客観的に死亡の危急が切迫していることが必要かについて

 わが国においては予め遺言をしておく風習は未だ普く行われず、概ね死亡に頻して遺言をするのが常であるが、かかる場合遺言者が自ら死亡の急迫な危険を感じ特別方式による遺言をしようとしても、それが客観的に符合しないときは遺言の効力を生じないものとするときは、遺言者が右危険を自覚し特別方式による遺言をしようとする場合にはそれが客観的に合致するものであるかどうかを一々穿索しなければならず、遺言の作成を躊躇せしめることになり、人の最終意思を尊重せんとする遺言制度殊に特別方式による遺言の趣旨の大半は没却せられるに至るであろうし、他面遺言者の自覚のみによつて特別方式による遺言をなしうるものとしても、特別方式による遺言は遺言者が普通の方式により遺言をすることができるようになつた時から六箇月間生存するときはその効力を矢うものであるから、さしたる不都合を招来するわけでもない。従つて、特別方式による遺言をなすには遺言者が何等の事由もないのに単にその生命の危険を空想し、又は漠然と予想するだけでは足りないが、必らずしも客観的に死亡の危急に切迫していることを必要とせず、疾病その他相当な事由がある場合遺言者自から自己の死亡の危急に迫つているものと自覚してなされることを以て足りるものと解するを相当とする。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする