盲人は公正証書遺言の証人になれるか【最判昭和55年12月4日】

事案の概要

  1. 被控訴人高浜〓子は、高浜雄二の長女、被控訴人高浜樹代は高浜雄二の二女である。
  2. 雄二は、昭和四二年三月二〇日姫路市広畑区本町四丁目の自宅において、神戸地方法務局所属公証人上坂広道の面前で、証人高浜和郎、同控訴人高浜ふさ立会の下に自分の死後全財産を包括して高徳英弘に遺贈する、ならびに遺言執行者を高浜和郎に指定するとの遺言をしたので、同公証人作成第一三一、三四四号遺言公正証書(以下本件公正証書という)が存在する。
  3. 雄二は、昭和四二年六月三〇日死亡した。
  4. 被控訴人らは、雄二所有の原判決別紙第一目録記載の不動産につき、神戸地方法務局姫路支局昭和四三年一月一八日受付第一、三四五号により持分各二分の一の相続による所有権移転登記を了し、また、未登記の同第三目録記載の不動産につき同支局同日受付第一、三四六号により、同第二目録記載の不動産につき同支局同年二月一九日受付第五、一四五号により、それぞれ持分各二分の一の所有権保存登記を了した。
  5. 遺言執行者高浜和郎は、昭和四九年二月七日死亡し、同年五月一七日神戸家庭裁判所姫路支部で控訴人が遺言執行者に選任された。
  6. 本件公正証書による遺言につき証人として立ち会つたAは、盲人であつた。

争点

  1. 盲人は公正証書遺言の証人になれるか

判旨

盲人は公正証書遺言の証人になれるかについて

民法九六九条一号は、公正証書によつて遺言をするには証人二人以上を立ち会わせなければならないことを定めるが、盲人は、同法九七四条に掲げられている証人としての欠格者にはあたらない。のみならず、盲人は、視力に障害があるとしても、通常この一事から直ちに右証人としての職責を果たすことができない者であるとしなければならない根拠を見出し難いことも以下に述べるとおりであるから、公正証書遺言に立ち会う証人としての適性を欠く事実上の欠格者であるということもできないと解するのが相当である。すなわち、公正証書による遺言について証人の立会を必要とすると定められている所以のものは、右証人をして遺言者に人違いがないこと及び遺言者が正常な精神状態のもとで自己の意思に基づき遺言の趣旨を公証人に口授するものであることの確認をさせるほか、公証人が民法九六九条三号に掲げられている方式を履践するため筆記した遺言者の口述を読み聞かせるのを聞いて筆記の正確なことの確認をさせたうえこれを承認させることによつて遺言者の真意を確保し、遺言をめぐる後日の紛争を未然に防止しようとすることにある。ところで、一般に、視力に障害があるにすぎない盲人が遺言者に人違いがないこと及び遺言者が正常な精神状態のもとで自らの真意に基づき遺言の趣旨を公証人に口授するものであることの確認をする能力まで欠いているということのできないことは明らかである。また、公証人による筆記の正確なことの承認は、遺言者の口授したところと公証人の読み聞かせたところとをそれぞれ耳で聞き両者を対比することによつてすれば足りるものであつて、これに加えて更に、公証人の筆記したところを目で見て、これと前記耳で聞いたところとを対比することによつてすることは、その必要がないと解するのを相当とするから、聴力には障害のない盲人が公証人による筆記の正確なことの承認をすることができない者にあたるとすることのできないこともまた明らかである。なお、証人において遺言者の口授したところを耳で聞くとともに公証人の筆記したところを目で見て両者を対比するのでなければ、公証人による筆記の正確なことを独自に承認することが不可能であるような場合は考えられないことではないとしても、このような稀有の場合を想定して一般的に盲人を公正証書遺言に立ち会う証人としての適性を欠く事実上の欠格者であるとする必要はなく、このような場合には、証人において視力に障害があり公証人による筆記の正確なことを現に確認してこれを承認したものではないことを理由に、公正証書による遺言につき履践すべき方式を履践したものとすることができないとすれば足りるものである。このように、盲人は、視力に障害があるとはいえ、公正証書に立ち会う証人としての法律上はもとより事実上の欠格者であるということはできないのである。

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