公証人が受遺者から聴取した遺言内容をもとに公正証書遺言を作成した場合でも有効か【最判昭和43年12月20日】

事案の概要

  1. 亡茂吉は、昭和三、四年頃からその妻子である控訴人らと別居して、被控訴人文枝と同棲し、同人とともに同人名義の待合、金融業を営んでこれと生計を共にし、昭和二九年頃本件不動産を取得したものであるが、昭和三七年六月頃に至り動脈硬化症等により病臥するようになつた。
  2. そこで、茂吉は自分の死後いわゆる妾である被控訴人文枝と妻子との間に財産上の紛争が生ずることを虞れ、文枝と相談した結果、その主たる財産である本件不動産(茂吉は他に同人名義の不動産を所有していなかつたことがうかがわれる。)は被控訴人らおよび控訴人らの四名に均等に分け与えるものとし、その旨を公正証書によつて遺言することとなり、文枝に東京法務局所属公証人佐藤佐一郎に遺言公正証書作成方を嘱託させた。
  3. 文枝は同年一〇月三日頃本件不動産の権利証を持参して同公証人役場に赴き、遺言の内容を告げて公正証書の作成を嘱託したところ、同公証人は文枝から聴取した遺言の内容を筆記したうえ、同月五日茂吉方に赴き、茂吉本人および立会証人佐藤進、猪瀬文雄両名の面前で同人らに既に公正証書用紙に清書してある右遺言の内容を読み聞かせたところ、茂吉は、「この土地と家は皆の者に分けてやりたかつた」という趣旨を述べ、右の書面に自ら署名、押印し、「これでよかつたね」と述べた。かくして、右書面を原本として、本件遺言正公証書は作成されたものである。

争点

  1. 公証人が受遺者から聴取した遺言内容をもとに公正証書遺言を作成した場合でも有効か

判旨

公証人が受遺者から聴取した遺言内容をもとに公正証書遺言を作成した場合でも有効かについて

遺言者たる訴外Aは、本件不動産を上告人らおよび被上告人らの四名に均等に分け与えるものとし、その旨を公正証書によつて遺言することを決意した後、被上告人Bをして公証人のもとに赴かしめ、公証人は、同被上告人から聴取した遺言の内容を筆記したうえ、遺言者に面接し、遺言者および立会証人に既に公正証書用紙に清書してある右遺言の内容を読み聞かせたところ、遺言者は、右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面にみずから署名押印したというのである。したがつて、右遺言の方式は、民法九六九条二号の口授と同条三号の筆記および読み聞かせることとが前後したに止まるのであつて、遺言者の真意を確保し、その正確を期するため遺言の方式を定めた法意に反するものではないから、同条に定める公正証書による遺言の方式に違反するものではないといわなければならない(大審院昭和六年(オ)第七〇七号同年一一月二七日判決民集一〇巻一一二五頁、同昭和九年(オ)第二四八号同年七月一〇日判決民集一三巻一三四一頁参照)。

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