民法969条4号但書の自署不能の場合【最判昭和37年6月8日】

事案の概要

  1. 本件土地家屋がもと訴外奈良ツナの所有であつたところ、同訴外人が昭和三十一年十二月九日死亡したこと、控訴人等がいずれも右奈良ツナの相続人であつて、本件土地家屋について函館地方法務局昭和三十一年十二月十五日受付第一五〇四一号をもつて控訴人等に対する相続を原因とする所有権移転登記がなされている
  2. しかるに右土地家屋については昭和三十一年十月二十九日付でこれを控訴人高田スヱに遺贈し遺言執行者を被控訴人と定める旨の遺言公正証書が作成されている
  3. 奈良ツナは胃癌のため昭和三十一年九月頃函館市内の高橋病院に入院し更に同年十月十日頃同市内の函館ドツク病院に移り加療を受けたが、右ツナは現金二、三万円を有していたほか医療費を支払う資力がなく、また弟妹である控訴人等も控訴人高田スヱを除いてはいずれも十分の資力がなかつたところから、右ツナは控訴人スヱ及びその夫である高田修一に対し前記所持金を預けたほかその余の一切の医療費を負担して支払つてくれるよう依頼したところ、同控訴人夫婦は快くこはを承諾し、不足医療費を負担して支払つた
  4. 右ツナの看護についても、控訴人奈良長次郎の娘君子が相当長期間に亘つて附添つたほか、主として控訴人高田スヱが控訴人奈良ハツと交互に見舞つて看護につとめ、また控訴人石田モト、同奈良テツ等も右ツナを見舞つたこともあるが右君子やその他看護に当つたものは主として病院に近い控訴人高田方で食事をとつていた
  5. 同控訴人スヱは同人方に出入りする新谷光子をして病人の衣類の洗濯等の雑用にあたらせた
  6. 控訴人スヱ夫婦が看護に附随した事柄まで含めて最も多くの犠牲を払つてツナの世話にあたつたので、ツナは同人等の物質的並に精神的な援助を感謝し、且つ本件土地家屋が自己の死後親族以外の人手に渡ることを防ぐには資力の豊かな控訴人スヱに譲渡するほかはないと考えてこれを同控訴人に遺贈することとし、昭和三十一年十月二十九日午前九時頃自己が入院中の函館ドツク病院の病室に公証人渡辺礼之助を招き前記のような内容の公正証書による本件の遺言をなした
  7. 同公証人は右ツナの病気が胃癌であることを聞き知つており且つ同女が約十五分間病床に半身を起こしたまま口述した後であつたので、同女が署名を自署すると申出たけれども、疲労や病勢の悪化を考慮して自署を押し止め、同公証人において遺言者が病臥中につき自署不能である旨を附記して奈良ツナの署名を代書し且つ同人の印鑑を押捺した

争点

  1. 民法969条4号但書の自署不能の場合

判旨

民法969条4号但書の自署不能の場合について

 原判決が本件遺言の際における諸般の事情を認定して、かかる場合は民法九六九条四号但書の自署不能の場合に該当するものと判示したのは正当である。

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