2年近く遡った日を記載した自筆証書遺言が有効か【東京高判平成5年3月23日】

事案の概要

  1. 奥野雄三(明治三一年五月三日生、以下「亡雄三」という。)は、昭和六一年一月一八日死亡した。
  2. 亡雄三の法定相続人は、その妻である亡奥野松代(明治三六年一〇月七日生、以下「亡松代」という。)並びにいずれもその嫡出子である参加人、控訴人奥野博紀(以下「控訴人博紀」という。)、控訴人椎名朱美(以下「控訴人朱美」という。)、控訴人奥野克爾(以下「被告人克爾」という。)及び被控訴人奥野悟朗(以下「被控訴人悟朗」という。)の六名であり、それ以外にはいなかった。なお、亡松代は、昭和六一年一一月二九日死亡した。
  3. 亡雄三は、昭和五六年四月四日付遺言書(以下「本件遺言書」という。)により、次の(一)ないし(四)を要旨とする自筆証書遺言をした(以下「本件遺言」という。)
       (一) 東京都大田区南馬込二丁目九一九番四号宅地289.13平方メートルについての借地権(以下「本件借地権」という。)は、被控訴人悟朗に相続させる。
       (二) 預金、有価証券及び会社からの弔慰金等の金員は、法定相続分どおり各相続人に相続させる。
       (三) 書画、骨董類は、亡松代に相続させる。
       (四) 被控訴人諸我時夫(以下「被控訴人諸我」という。)を遺言執行者に指定する。
  4. 亡松代、参加人、控訴人ら及び被控訴人悟朗は、昭和六一年七月、亡雄三の遺産につき、次の(一)ないし(六)を要旨とする遺産分割等の協議をした(以下「本件協議」という。)。
       (一) 本件借地権及び電話加入権は、被控訴人悟朗が取得する。
       (二) 預金、有価証券及び会社からの弔慰金等の金員は、法定相続分に従って各相続人が取得する。
       (三) 家具、調度一式は、亡松代が取得する。
       (四) 書画、骨董類については別途協議する。
       (五) 被控訴人悟朗は、代償金として、参加人、控訴人博紀及び控訴人克爾に対して、それぞれ三一二万二九八九円を、控訴人朱美に対して二五二万二九八九円を支払う。
       (六) 被控訴人悟朗は、亡松代を扶養する。
  5. 本件遺言書にはその作成日として昭和五六年四月四日と記載されている。
     一方、本件遺言書には遺言執行者に指定された被控訴人諸我の住所として、「松戸市牧の原二の五牧の原団地二の八の三〇六」と記載されているが、被控訴人諸我が右住所に転居したのは昭和五七年一二月であることが認められ、亡雄三は、被控訴人諸我が右転居をした以後に、実際に作成した日と異なる日を作成日とする遺言書を作成した

争点

  1. 2年近く遡った日を記載した自筆証書遺言が有効か

判旨

2年近く遡った日を記載した自筆証書遺言が有効かについて

本件遺言書が実際に作成された日及び実際の作成日と異なる日を作成日と記載された理由は明らかでないが、二年近くも遡った日を記載しているところから見ると、単なる誤記ではないものというべきであって、かかる不実の日附の記載のある遺言書は、作成日の記載がない遺言書と同視すべきものであるから、本件遺言は、民法九六八条一項所定の自筆証書遺言の方式を欠くものとして、無効と解すべきものである。

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