自筆証書遺言の加除訂正が方式に従っていない場合無効か【最判昭和56年12月18日】

事案の概要

  1. 昭和三二年ごろ訴外Aがその所有にかかる別紙物件目録記載の本件建物を第一審被告に引渡し、本件公正証書による遺言のなされた
  2. Aは昭和四九年三月五日、「同人が従前なした遺言は全部取消す」旨の自筆証書遺言をした
  3. 本件の自筆遺言書は、その全文中、「私は今まで遺言書を書いた記憶はなが(「記憶はないが」の意であることは全体の趣旨から明瞭である。)つくつた遺言書があるとすれば」との記載の次に「そ」と書きこれを×印で抹消し、それに続けて「それらの」と書いた後、次行上段に「ユ」と書きかけて、行を改め「遺言書は全部」と続け、その次に「取消……」と記載した部分を直線を数条引いて抹消し、続いて次の行の下方に「取消す」と書いて本文を結んであることが認められる。そして右の「そ」「ユ」及び「取消……」の三カ所には、「氏名自書」名下に押捺された印と同一の印がそれぞれ押捺されている。しかしながら特段に「加除変更の場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名した」形跡は見あたらない。

争点

  1. 自筆証書遺言の加除訂正が方式に従っていない場合無効か
  2. 上記事案において遺言は無効か

判旨

自筆証書遺言の加除訂正が方式に従っていない場合無効かについて

 自筆証書による遺言の作成過程における加除その他の変更についても、民法九六八条二項所定の方式を遵守すべきことは所論のとおりである。しかしながら、自筆証書中の証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、たとえ同項所定の方式の違背があつても遺言者の意思を確認するについて支障がないものであるから、右の方式違背は、遺言の効力に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である(最高裁昭和四六年(オ)第六七八号同四七年三月一七日第二小法廷判決・民集二六巻二号二四九頁参照)。

上記事案において遺言は無効かについて

 本件においては、遺言者が書損じた文字を抹消したうえ、これと同一又は同じ趣旨の文字を改めて記載したものであることが、証書の記載自体からみて明らかであるから、かかる明らかな誤記の訂正について民法九六八条二項所定の方式の違背があるからといつて、本件自筆証書遺言が無効となるものではないといわなければならない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする