加除変更の要件を欠く記載がある遺言は無効か【大阪高判昭和44年11月17日】

事案の概要

  1. 訴外加藤秀嶺が昭和三七年五月二九日本件遺言書中の第六、七および九項の加除変更部分を除き遺言文、日付および氏名を自書して押印し九項目から成る遺言書を作成したうえ、右遺言書を所持して弁護士山本寅之助方へ相談に行き、同弁護士より遺言の内容は別として文意上の疑義や不明瞭な若干の箇所を指摘されてその箇所の訂正を依頼し、同弁護士が右秀嶺の面前で右遺言書第六、七および九項中の各一部を加除変更(ただし第七、九項は加入のみ)するに至つた
  2. 右加除変更は内容をあらたにする全然別個の遺言というよりむしろ従前の文意を明確にするものである
  3. 右加除変更についてその場所に押印がなく、ただ欄外にその旨の付記押印があるが、遺言者の署名がない<

争点

  1. 加除変更の要件を欠く記載がある遺言は無効か

判旨

加除変更の要件を欠く記載がある遺言は無効かについて

 本件遺言は遺言者が加除変更部分を除く遺言文を自書し、かつ遺言書に日付および氏名を自書しこれに押印して作成した遺言書によるものであるが、その遺言書中の一部に加除変更があるからその限りで自筆証書遺言における全文自書の要件を欠き、またその加除変更は遺言者以外の他人によつてなされ、かつ遺言者の署名を欠くから、加除変更の要件を欠くものというべきである。したがつて、明白な誤記による訂正の限度を超える加除変更部分の意思表示は、民法九六八条二項により無効である。もつとも、右加除変更部分は本件遺言中の僅少部分に止まり付随的補足的地位を占めるにすぎず、その部分を除外しても遺言の主要な趣旨は表現されているばかりでなく、右加除変更が遺言者の意思に従つてなされたものであるから、右加除変更だけによつては、本件遺言全部を無効とすることはできず、他に特段の事情のない限り加除変更がない場合としてなお効力をもつものと解すべきである。

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