限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができるか【最判平成10年2月13日】

事案の概要

  1. 本件土地の所有者であったAは、昭和六二年一二月二一日、本件土地を上告人らに死因贈与し(上告人らの持分各二分の一)、上告人らは、同月二三日、本件土地につき右死因贈与を登記原因とする始期付所有権移転仮登記を経由した
  2. Aは平成五年五月九日死亡し、その相続人は上告人ら及びBであったが、Bについては同年七月九日に相続放棄の申述が受理され、上告人らは同年八月三日に限定承認の申述受理の申立てをし、右申述は同月二六日に受理された
  3. 上告人らは、平成五年八月四日、本件土地につき右(一)の仮登記に基づく所有権移転登記を経由した
  4. 被上告人は、Aに対して有する債権についての執行証書の正本にAの相続財産の限度内においてその一般承継人である上告人らに対し強制執行することができる旨の承継執行文の付与を受け、これを債務名義として本件土地につき強制競売の申立てをし、東京地方裁判所は平成六年一一月二九日強制競売開始決定をし、本件土地に差押登記がされた

争点

  1. 限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができるか

判旨

限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができるかについて

不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができないというべきである。ただし、被相続人の財産は本来は限定承認者によって相続債権者に対する弁済に充てられるべきものであることを考慮すると、限定承認者が、相続債権者の存在を前提として自ら限定承認をしながら、贈与者の相続人としての登記義務者の地位と受贈者としての登記権利者の地位を兼ねる者として自らに対する所有権移転登記手続をすることは信義則上相当でないものというべきであり、また、もし仮に、限定承認者が相続債権者による差押登記に先立って所有権移転登記手続をすることにより死因贈与の目的不動産の所有権取得を相続債権者に対抗することができるものとすれば、限定承認者は、右不動産以外の被相続人の財産の限度においてのみその債務を弁済すれば免責されるばかりか、右不動産の所有権をも取得するという利益を受け、他方、相続債権者はこれに伴い弁済を受けることのできる額が減少するという不利益を受けることとなり、限定承認者と相続債権者との間の公平を欠く結果となるからである。そして、この理は、右所有権移転登記が仮登記に基づく本登記であるかどうかにかかわらず、当てはまるものというべきである。

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