相続財産の限度で支払いを命じる判決の確定後限定承認と相容れない事実を主張することが許されるか【最判昭和49年4月26日】

事案の概要

  1. 原告は、義郎の相続財産管理人を被告とする前訴において、本訴と同一の権利発生原因事実に基づき、本件建物価額の償還および右償還金に対する遅延損害金の支払を請求し、すでに、右相続財産管理人に対し、右償還金四、七八五、〇〇〇円および内金六六九、〇〇〇円に対する昭和三〇年三月二五日から支払ずみまで年五分の遅延損害金を義郎の相続財産の限度で支払うべきことを命じた確定の給付判決がある
  2. 原告は、前訴の判決はいずれも被告らの限定承認が有効であることを前提とするものであるが、被告らは民法第九二一条第三号の事由により、単純承認をしたものとみなされるものであるから、相続財産の限度にかかわらず前記償還金の支払義務を負うべきであり、原告は、被告らに対し相続財産の限度にかかわらず右の支払をすべきことを訴求する利益がある旨主張する。

争点

  1. 相続財産の限度で支払いを命じる判決の確定後限定承認と相容れない事実を主張することが許されるか

判旨

相続財産の限度で支払いを命じる判決の確定後限定承認と相容れない事実を主張することが許されるかについて

 右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債権者が、右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法九二一条の法定単純承認の事実)を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されないものと解すべきである。けだし、前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみならず、限定承認が認められたときは前述のように主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、また民訴法五四五条二項によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されないものと考えられるからである。

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