最大決昭和41年3月2日

家事審判法九条一項乙類一〇号に規定する遺産の分割に関する処分の審判は、民法九〇七条二、三項を承けて、各共同相続人の請求により、家庭裁判所が民法九〇六条に則り、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の職業その他一切の事情を考慮して、当事者の意思に拘束されることなく、後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に分割を形成決定し、その結果必要な金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を付随的に命じ、あるいは、一定期間遺産の全部または一部の分割を禁止する等の処分をなす裁判であつて、その性質は本質的に非訴事件であるから、公開法廷における対審および判決によつてする必要なく、したがつて、右審判は憲法三二条、八二条に違反するものではない(最高裁昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年六月三〇日大法廷決定、民集一九巻四号一〇八九頁、同昭和三七年(ク)第二四三号同四〇年六月三〇日大法廷決定、民集一九巻四号一一一四頁参照)。
 ところで、右遺産分割の請求、したがつて、これに関する審判は、相続権、相続財産等の存在を前提としてなされるものであり、それらはいずれも実体法上の権利関係であるから、その存否を終局的に確定するには、訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならない。しかし、それであるからといつて、家庭裁判所は、かかる前提たる法律関係につき当事者間に争があるときは、常に民事訴訟による判決の確定をまつてはじめて遺産分割の審判をなすべきものであるというのではなく、審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことは少しも差支えないというべきである。けだし、審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によつて右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解されるからである。このように、右前提事項の存否を審判手続によつて決定しても、そのことは民事訴訟による通条の裁判を受ける途を閉すことを意味しないから、憲法三二条、八二条に違反するのではない。

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