高松高判平成18年6月16日

相続人が複数ある場合において、相続財産中に可分債権があるときには、当該債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利をそれぞれ単独で承継するのであって、共同相続人による遺産共有関係に立つものではないが、共同相続人全員の合意がある場合には、当該債権を遺産分割の対象とすることもできると解される。
  遺産分割審判手続において、被相続人が有していた預貯金債権等の可分債権を遺産分割の対象とすることができるのは、共同相続人全員の明示又は黙示の合意がある場合に限られるところ、その合意の存在は、当該可分債権を当該審判手続において遺産分割の対象とするための要件であり、その要件が充足されているか否かの判断は、共同相続人間での合意の成否ないし有無という事実認定の問題である。そうすると、これについては、家庭裁判所が当該審判手続中において遺産の分割のための前提問題として審理判断すべきであり、かつ、それをもって足りるというべきである。遺産分割手続を離れてこれとは別に独立の事項として可分債権の遺産分割対象性の消極的確認を求めることは、共同相続人間での上記合意が存在しない(成立していない)という事実の確認を求めるものに帰着し、実体的な権利関係の確認を求めるものとはいえないし、そのような事実の確認が遺産分割をめぐる紛争の抜本的解決に資するものということもできない。
  なお、被控訴人らは、本件訴えにつき、本件預貯金が遺産分割の対象財産となっていないという現在の法律関係の確認を求めるものであるから、適法であると主張する。しかしながら、相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され共同相続人に相続分に応じて承継されるのであるから、当該可分債権が遺産分割の対象でないことの確認を求めることは、とりもなおさず、当該共同相続人が単独で相続分に応じた分割債権を有していることという現在の権利関係の確認を求めることにほかならないところ、共同相続人は、各自が単独で承継した分割債権に基づいて、金融機関に対し、個別かつ独立にその払戻しを請求することができるのであって、相続人の範囲及びその相続分の割合について争いのない共同相続人間において、既に各共同相続人が分割承継した被相続人名義の預貯金に関する帰属の確認を求める訴えは、その預金をめぐる紛争の解決にとって有効適切なものとはいえない上、遺産分割審判手続との関係では、前記のとおり、共同相続人間で当該預貯金を遺産分割の対象とすることの合意の不存在ないし不成立という事実の確認を求めるものに帰着し、その確認の利益を肯認することはできないというべきである。
  以上の次第で、共同相続人間において可分債権につき遺産分割の対象でないことの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解するのが相当である。

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