最判昭和60年1月31日

福岡工大は、昭和五四年三月、規程六条を改正し、ただし書として、新たに「遺族の範囲及び順位は、私立学校教職員共済組合法二五条の規定を準用する。」旨追加したというのである。そして、私立学校教職員共済組合法二五条(昭和五四年法律第七四号による改正前のもの。以下同じ。)が準用されると、同条により国家公務員共済組合法二条、四三条が準用されることになり、その結果、改正後の規程六条によれば、福岡工大の死亡退職金の支給を受ける遺族は、(1)職員の死亡の当時主としてその収入により生計を維持していたものでなければならず、(2)第一順位は配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)であり、配偶者があるときは子は全く支給を受けない、(3)直系血族間でも親等の近い父母が孫より先順位となる、(4)嫡出子と非嫡出子が平等に扱われる、(5)父母や養父母については養方が実方に優先する、ということになる。すなわち、改正後の規程六条は、死亡退職金の受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは著しく異なつた定め方をしているのであり、これによつてみれば、右規程の定めは、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解するのが相当である(最高裁昭和五四年(オ)第一二九八号同五五年一一月二七日第一小法廷判決・民集三四巻六号八一五頁参照)。のみならず、改正前の規程六条においても、死亡退職金の受給権者が相続人ではなく遺族と定められていたこと、改正前も前記私立学校教職員共済組合法二五条及び国家公務員共済組合法二条、四三条が施行されていたことを考慮すると、他に特段の事情のない限り、改正前の規程六条は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法上の相続とは別の立場で死亡退職金の受給権者を定めたものであつて、受給権者たる遺族の具体的な範囲及び順位については、前記各法条の定めるところを当然の前提としていたのであり、改正によるただし書の追加は、単にそのことを明確にしたにすぎないと解するのが相当である。そして、右のように解することを妨げるような特段の事情の主張、立証はなされていない。そうすると、改正前の規程六条にいう遺族の範囲及び順位に関しては、前記各法条の定めるところによるべきであり、右遺族の第一順位は、職員の死亡の当時主としてその収入により生計を維持していた配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)と解すべきことになる。

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